姐さんと呼ばせてください!

女優さん好きな私が姐さんと呼びたい方々への一方的なファンレターを書いています

桐野夏生「ハピネス」

女の世界は怖いと人は言う。女である私はそういう世界を拒んで生きている。IT業界での経験が長いのも、女性が少なくそういう世界に触れにくかったというのも一因だ。

この小説では「ママ友」の世界が描かれている。それぞれを子供の名前+ママと呼び合う世界。互いに住んでいるフロアで年収をさぐり、互いのファッションや子供の学歴で優越を刺激し合う。

でもね。女なんて子供の頃から何らかの形でこういう世界に触れているのよ。遠足の時に作るグループで自分がどの位置にいるのかを知り、上にいきたいのか下にいきたいのか、いやいけるのか?と考えて、自分の位置にふさわしいキャラを作る。そしてキャラを演じながら、上のグループから受けた嫌な思いを下にぶつけたり、「いつか見返してやる!」という念を励みに生きていくのさ。

女って人からどう思われてるか、どう見られてるかというのをガソリンに生きるところがあるから、過敏になりやすいのかなぁ。そして自信が無い時ほど、ガソリン満タンな人を崇拝したくなるし、アラを探したくなる。

あとさ。やはり友達の作りの難しさはずっとあるんだね。互いに家庭のことを話したり、秘密を話してキズナにしようとしたって、友達になってくれるのか分からない。一番ドキドキした箇所は、主人公の過去の旅にママ友がついてきてくれるところ。私だったら一緒にいてくれるのは嬉しくもあり、面倒でもあり。主人公は過去の失敗から、人に対して過敏になっているけれど、私も適度な人間関係を保ちたいばかりで、そのさじ加減が分からなく疲れてしまう。「自然体」ってなんでしょう。主人公とママ友がだんだんと自然体になっていく様が書かれていますが、そのきっかけは「何となくこの人となら」って感じのもので、妙に力を入れるものではないと。そして「なんで私こんなこと言っちゃったの」っていうものは正しい。おそらく。そう、私はそいう「何となくこの人となら」を待っているのである。

さいご。人にはそれぞれ事情があるんだなと。でこういう各自のランク付けって老人ホームでもあるんでしょうか?あるんでしょうね。もうそういう外に向けたアンテナを取り外したい。取り外せなくても感度を鈍くしたいなぁ。楽になりたい。

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